ストーリー

◆ 世界の誕生と神話時代


世界樹の最上層にある「神々の国」と呼ばれる世界。 

そこは一面、新緑の草原に囲まれ、永遠に枯れることのない一筋の大河の対岸に存在している。 

大河の水面は一年中絶えず渦巻いている濃い霧に覆われており、

その中央に位置するのが神々の住む聖なる島である。 

霧の中には、現れては消える燃え盛る炎と、渦巻く霧を稲妻が貫いている。

そして四方全てに天をも貫くような荘厳な城がそびえ、激しい波が城の裾を絶えず打ち続けている。

 

獰猛な猛禽類が潜む丘には延々と宮殿が連なり、

その中で最も荘厳かつ華麗な宮殿が最高神オーディンの居城「グラズヘイム」であり、

その館である「ヴァルハラ」はグングニルの槍の加護に覆われ、

椅子は全て銀製で館の中央には黄金の玉座が鎮座しおり、

最高神であるオーディンはこの玉座から天界と人間界を見渡している。 


世界の中心である「世界樹」の大きく広がる枝が最高神オーディンの居城である

「グラズヘイム」を覆っており、城の黄金で出来た屋根の端には金環の雄鶏が佇み、

毎朝神々の目覚めの時を知らせている。

そしてこの雄鶏の鳴き声に、死者の世界にいる紅鶏も呼応し、

そこからけたたましい「時間」が生まれた。 

オーディンが神々を率いてこの地に集い根を下ろしたことで、

神々による黄金時代が幕を開けたのである。


◆ 残された精霊王、そして再生した世界


紀元前三万年、神々がヴァルハラを去った後、

そこに残ったのはカーライル大陸の虚空に現れた火・水・風・土の四大精霊の王たちだった。 

世界の進化と共に、四大精霊の力が次第に融合し、珍しい変化が起こった。

それは神々の力の残滓の影響かもしれないが、

精霊の持つエネルギーが次第に万物の中に宿るようになったのだ。 


生物が誕生するたび、この精霊の力が躍動し、逆に生物が消滅する際には四散する。

そして精霊の力が一定以上集結した時、意識を持った新たな精霊が生まれるようになった。


◆ 精霊戦争:平和の崩壊


四大精霊の王たちは不和により不満を募らせていたが、

ついにそれが爆発、それぞれが互いに神の意思に背いたとみなし、

完全なる世界を自らの手で破壊し始めた。


彼らは皆、自分こそが世界の守護者である為、

他の王たちを排斥することだけを考えるようになり、自らの職務を忘れ、

ただただ嫉妬による狂った破壊行為に身を置くだけとなってしまった。

そして遂には四大精霊の王達は決裂し、大災難と呼ばれる戦争が勃発、


世界の全てを破壊し尽くした。


◆ 精霊王の追放


庇護神アッサラは蔓延する混沌のエネルギーが別の形で世界の破壊に影響を及ぼすことを危惧し、

最悪の状態を回避する為、秩序を司る力の一部を地上で

最も強大な種であるグレートドラゴンに与えるよう神々に進言した。 

そしてアッサラの計画のもと、グレートドラゴンと精霊によって

大掛かりな儀式をゆっくりと進めながら来るべき時を待った。


戦争は次第に激しさを増したが、その中でアッサラは巧妙な計略を巡らせ、

土の精霊王と風の精霊王が直接相まみえるよう誘導、

時を同じくして火の精霊王ディリスと水の精霊王フローヤも巧みに誘導され、

遂に四大精霊王が一堂に会する絶好の機会を作り出すことに成功した。


秩序を司る力を得たグレートドラゴンの力により解放された精霊たちは、

負の感情に縛られることのない、真に知恵のある生物へと進化を果たしたのである。 

自らの職務を思い出した水の精霊王フラヤと火の精霊王ディリスは

ドラゴンの魂を守護する「秩序の門」を世界のとある場所に隠し、

永遠に開かれることがないようした。 


その後フローヤは秩序のグレートドラゴンが残したドラゴンの卵を注意深く見守り、孵化するのを待った。 

これにて古の戦争はついに終結したが、完全なる世界は二度と戻らぬものとなり、

大陸はいくつかに分断された。


そして戦争で傷ついた全てのものがゆっくりと回復するのを待つ時代へと変異していくのだった。


◆ 人類、そして精霊使いの登場


千年という長い時を経て、次第に戦争の傷は癒され、世界はゆっくりと生命力を取り戻していった。

そのような中で人類はそのたぐい稀なる素質を発揮し始めた。

彼らは次第に集落を作り共に協力をしながら生活するようになり、

更にはそれぞれが広がることで文明を発展させていった。


また、精霊王達の支配から脱した精霊は知恵を持ち始めたが、

依然として現世で自由に姿を現すことはできなかった。

このような時代の流れによって、後に精霊使いと呼ばれる人間が生まれ始めた。

精霊使いを通じて人々は精霊とコミュニケーションが取れるようになり、精霊の力を借りることが可能となった。


当初は神の使いや祭祀のみが精霊の力を得られると考えられていたが、

次第に心を込めることで精霊とコミュニケーションを取ることができ、

更には体内に精霊の力を蓄えることができる生物は生まれ持っての才能に左右されるが、

訓練次第で誰でも精霊使いになれる可能性があることが発見された。


だが精霊と魂の契約を交わした精霊使いは、他の生命を吸収することで

自らの精霊をより強力なものへと成長させることができる。

その影響からか精霊使いは通常の人間よりも長い寿命を持つようになるが、

そのことで普通の人間との確執は決定的なものとなってしまい、

彼ら精霊使いは精霊戦争時に切り裂かれた異空間を探し出し、

そこに精霊使いだけの集落を建設するようになった。

そしていつからかこのような精霊使いの住む異空間は精霊界と呼ばれるようになっていった。

ただ、精霊使いの中にも自らを人類としてみなす者も依然として多く存在していた。

彼らは普通の人間たちの中で生活をしながら、各方面において貢献し、人々の生活を改善していった。


精霊使いの繁栄で、人々は神の力とは異なる精霊の力による恩恵を受けることにより、

諸神の宗教や信仰に亀裂が生まれ始め、神々の影響力が次第に衰えていった。

神の中には託宣を下す形で精霊使いを自らの信徒とするものもあったが、

神々の大部分は懸念をしておらず、特に手を加えることはせず、流れに任せるのみだった。


これは、神々の戦争自体はカーライル大陸の外で依然として続いているという混沌の中で、

このような神の思惑とは全く別の進化の道筋は、神々にとっても新世界を創造する際の

参考になることに加え、精霊の力だけでは世界を完全コントロールすることは出来ず、

危機を招くようなことには至らないという判断から、

々はカーライル大陸のあり方にさほど大きな関心を寄せることはなかったのである。


◆ 人類の起源:魔法の発見から暗黒時代まで


遥か昔から、人類は四大精霊の力の存在を認識しており、

この認識は時間の経過と共にゆっくりと変化していった。

この時期から自然の力としてだけではなく、魔法の力と世界の関係について

明らかにしようと試みた文献が多く出現し始めた。


その中でもフェルナンドの著書《根源に関する研究について----29年》は、後の人々に四大精霊、

精霊や魔法の力等の根源的問題について正確な分析を打ち出した最初の作品として認められ、

魔法の基本性質と扱い方について明示したもっとも古い書物として後世に語り継がれることとなった。


現在ではフェルナンドは「賢人」や「王国の基礎を確立した人物」と称され、

初代国王ショーンの肖像画と共に宮殿に並ぶほどであったが、

魔法の研究分野において、彼の著書は精霊使いたちには異端とみなされ、

更には「無知な人類が記した無知な書」と呼ばれていた。


しかし「オリタヤ学院」の建設によってギルドと学院は急速に発展したことで、

ケンドールは魔法理論が最も発達した場所となった。

これには精霊使いたちもフェルナンドの理論は全くの誤りではなく、

らの知識のかなり先を行くものであると認めざるを得なかった。


このことにより、彼の著書は権威あるものとして尊ばれるようになった。


一変、オヌオハ王国が南部の首都ケンドールを中心に急速に発展していた頃、

遥か昔に一般の人々から分裂し、未開拓地で独自の生活を行なっていた蛮族もまた勃興し始めた。

精霊使いを崇める人類とは異なる形の文明として発展した蛮族は、古来より続く神への畏敬に従い、

火の神であるシーサーと戦争の神であるホラックスを特に崇拝していた。


更に他種族との長きにわたる抗争と各地での他民族との混血が続いたことにより、

生まれながらにしてたくましい肉体を持つようになり、元来の戦いを好む残忍な性格と相まって、

すぐに北方の痩せた土地での障害を一掃し、牛馬を持って広大な草原を占領した。


魔法の研究が進む中、啓蒙者フェルナンドも彼の弟子ニコも、自身の著書では一部の内容を隠している。

それはわずかに書き並べられた目次にも別途まとめた文献にも記載されていないが、

フェルナンドは著書の中にこう記されている部分がある。


「これは非常に危険な流れだ。この種の魔法は研究対象から除外するべきであろう。

確かにこれらも同じく力の根源を示しているが、同時に底知れぬ闇も内包している。

研究者はその過程で方向を見失いつつある」


後世の研究の中で、魔法使いらはこの部分が指す内容を「黒魔法」と呼び、

少なくともニコが存命中の時代は研究領域においてタブーとされていた。


そしてある日、地下の穴から暗黒種族が絶えずわき出てくる事件が発生した。

単体ではそれほど脅威ではないこの奇怪で巨大な虫たちは、いくら倒してもその数が減ることがない。

人員の消耗により補給が困難になるにつれ、王国守備軍の西南防衛線は次第に退却し、

一進一退の大規模な戦いと、長く伸びた防衛線がオヌオハ王国の力を急速に削いでいった。


王国は重要な領土を死守することで疲弊ばかりが募り、戦いに勝利する方法を見出すことができずにいた。

連合軍も各地に集結し、連携を取りながら地下へと攻撃する為の入り口を切り開こうと奮戦したが、

この異世界の暗黒生物らに対してなかなか効果的な一撃を与えることができず苦戦を強いられていた。

そのような中、ついにローソン・ショーン統率のもと、暗黒種族は地上から完全に駆逐され、

人類は勝利をおさめることに成功した。

長きにわたる戦争により疲弊した王国やその国民たち双方による協議の結果、

王国は解体され、四つの国の独立が認められることとなった。


国王は騎士団を解散し一人の平民となり、

引き続き協力を申し出た一部の兵士らと共に力を合わせてケンドールを再建した。

これによりオヌオハは永遠に歴史から消えることとなった。

その後、先見の明を持つショーンが提議した大陸議会制度が採用され、

未来に起こりうる災難に対して一通りの防衛策と各種制度を制定した。


◆ 人類の起源:四大公国の設立と精霊時代の再来


オヌオハ王国が解体した何年後、

暗黒帝王ディオスの影がダークドラゴンと化し、暗黒種族の残党を率いて熾烈極まる逆襲を開始した。

黒い霧と人心を惑わす攻撃に、以前の戦術では全く太刀打ちできず、

連合軍は最終防衛線にて波のように押し寄せる攻撃を耐え続けるしかなかった。

そのような状況下で、人々の希望は伝説として語り継がれていた神聖なる「ヴァルキリーの矛」に託された。

その後英雄ミリヤの獅子奮迅の活躍によって、辛うじてディオスを打ち倒すことに成功したのだった。

この戦乱を経て人々は強大な統一国家の必要性を感じ、多くの民衆の指示のもとガスターマ帝国が成立した。


帝国成立初期は一通りの改革措置が進められ、陸の後世に影響する各種法律や制度が制定された。

これらを中心となって導いたマカラ一世は父親の何者をも恐れぬ勇敢さと、

母親の傑出した知力を受け継いだとされ、後世にも尊敬の念をもって「栄光の王」と称された。


帝国時代は問題なく勧め、

マカラ9世の時帝国内にいる優れた功績を持つ四人の大臣それぞれに王の位を与え、

帝国の東西南北それぞれを分割して領地とし、カーライル大陸に四大公国を築いた。


北のビスター公国は武を尊び、帝国の軍事要所となった。

南のウェイ二―公国は商業と貿易が盛んで、世界各地から商人と共に珍しい品物が集まった。

東のエキア公国は魔法を尊び、歴史上に名を残す数々の大魔導師と精霊使いを生み出した。

西のホワイトライアン公国は豊かで頑強な国として有名で、

盛んな手工業と大陸屈指の科学技術を持った四大公国の中で総合的な国力が最も高い国であった。


時間の経過と共に、三千年に一度の精霊の活躍期が再び訪れ、

人々は活発となった精霊の力の影響を受けて再び変動期に入ろうとしていた。

この時、様々な噂が人類と精霊使いの間を行き交った。


「曰く、風の精霊王がディオスとの戦いで全ての魔法と力を失った」

「曰く、水の精霊王は精霊議会の安定を維持する為、土の精霊王の野望を阻止した」

「それが風の精霊王の失踪につながり、また風の精霊王と思われる存在が

稀に世界各地に現れるようになった」......と。


これは普通の存在となっていた風の精霊王が、

新たな危機を予感しグレートドラゴンの保護下で密かに重要な任務を行なっていた為である。


風の精霊王は信頼できる新世代の精霊使いを探し続け、

精霊議会の中で暗躍する勢力が世界に悪影響を与えるのを阻止し、

間もなく復活すると予想されるディオスに対抗しようとしていた。

復活間近のディオスは、恐らくすでに「新世界に通じる鍵」を持っているのだ。


長らく失踪している風の精霊王を探し出すことで、

新世界に通じる大いなる門を開くことが可能な鍵を持ったディオスを復活させる方法がわかる......。

未知なる新世界への希望と大いなる脅威を前に、風の精霊王の行方こそが人々の注目の的となった。

平穏な帝国に無数の暗雲が立ちこめ、様々な勢力がその中に紛れて暗躍し、運命の巨大な輪が動き始めた。


歴史もまた、あなたが加わることで新たな一ページを開こうとしている。